実録!
赤壁の戦い


周喩の決断

 

 周瑜は早速舞い戻り、孫権や降伏論を唱える役人らに向かって、こう説いた。
「曹操は漢の丞相を語る逆賊に他ならない。
 将軍は類まれな武勇と英知を兼ね備えておられる上に、父・兄の武勲を受け継ぎ、江東の広大な領土、選りすぐった兵士達、天下の大業のために命を惜しまぬ武将、全てが揃っているのですから、この乱れた天下を縦横に駆け巡って、漢室再興のために奸賊共を退治なさるべきです。まして曹操めが自ら死地に飛び込んできたというのに、これを討たずに帰順するなどもってのほか。そこでどうか私の考えを述べさせて下さい。
 仮に曹操が北方を完全に平定し、十分に兵を休ませ、準備を整えてから攻め下って来たとしても、我らと水上で互角に戦う事などできるはずはありません。まして、まだ北方の地は完全に平定されておらず、さらに潼関の西には馬超・韓遂らが曹操の背後を脅かしています。
 また馬を駆るのを得意とする北方の軍勢が鞍を降りて船を漕ぎ、水に慣れた我が水軍と戦っても何ほどの事が出来ましょう。それに中原から遠く離れたこの江南の地に駆り立てられた兵士達は、風土にも慣れてないので、病人が続出するに違いありません。
 これらは全て兵法の禁ずるところですが、曹操はその禁を犯して攻めてきているのです。今こそ曹操をひっ捕らえる絶好の好機です。どうか私に精兵三万をお与え下さい。必ずや曹操を打ち破ってみせます」
わが意を得たとばかりに、孫権は応じた。
「あの悪党の、漢室を滅ぼして帝位を奪おうという野心は、今に始まったことではない。それが今までうまく行かなかったのは、袁紹・袁術・呂布・劉表そしてこの私がいたからだ。だが今や群雄滅んで、残るは私一人。曹操を倒すか、私が倒れるか、今こそ決戦の時だ。
曹操、討つべしという君の意見は、私の意見でもある。天が君を私に授けてくれたのだ」
 これが呉書・周瑜伝に収められている赤壁開戦への一部始終。

 しかし大事な人を忘れてはいけない。そう、劉備に先んじて、孫権に援軍の使者としてやってきた、諸葛亮である。


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