実録!
河北統一戦線


利用する者・される者

 

 献帝の意向を劉和から聞いた袁術は、劉虞の軍勢を自分が利用しようと企み、劉和を足止めした。そして劉虞の軍勢が到着したら自分も出兵して長安に向かう事を約束し、劉和に手紙を書かせたのである。
 息子の手紙を見た劉虞は、当然兵を送ろうとした。数千からなる騎兵部隊を出動させようとした。しかし公孫サンは袁術のこの企みを見破り、軍隊を派遣しないように劉虞に強く訴えた。しかし先日の丘力居の件もあり、劉虞は公孫サンの意見に耳を貸さなかった。公孫サンは逆に、自分が反対したことが袁術にばれてしまってはまずい、と従兄弟の公孫越に千騎を率いさせ、劉虞の軍勢に同行させた。さらに密かに袁術と手を結び、劉和を捕らえて劉虞の軍勢を奪うようにそそのかしている。結果、公孫サンの思惑通り、袁術は劉虞に反旗を翻し、劉和は命からがら逃げ延びた。この為、劉虞と公孫サンの関係は一層悪化してしまったのだ。ちなみにこの後、劉和は袁紹の元に逃げ延びている。

 孫堅が焼け野原と化した洛陽に入城したのをきっかけに、連合軍は自然崩壊し、群雄達の勢力争いが熾烈化していく。最も早く動いたのは他でもない、公孫サンだった。
 公孫サンは人口も多く、豊かな土地を有しているキ州に狙いを定め、安平に駐屯していた韓馥軍を攻撃し、これを撃破。そのまま董卓打倒を口実にそこに留まった。明らかにキ州制圧を狙っての行動だったのだ。実はこの進軍の裏で動いていたのは袁紹だった。逢紀はこう進言した。
「董卓打倒の為には、物資の補給が肝心です。私に良い案がございます。北方の公孫サンに話しを持ちかけ、南下してキ州を攻めるように仕向けるのです。あの男の事、必ず出兵してきます。これを見て韓馥が震え上がったところで、どうするのが身の為か、良く話して聞かせれば、きっとキ州を譲る気になりましょう。これでキ州の牧の座は、閣下のものという段取りであります」
 袁紹はこの進言通りに事を進ませ、果たして公孫賛は出兵してきたのである。ちなみにこの時逢紀はまだ韓馥の配下であり、これを考えても、袁紹がキ州を統治する事が望まれていたのが分かる。

 韓馥は進軍してきた公孫サンに対し、不安でいっぱいだった。さらに頼みの袁紹までも長安を目指して進軍すると言い、こちらに軍勢を向けてきた。そこに高幹や荀シンらが次々に訪ねてきて、口々に説いてくる。
「公孫サンは勢いに乗って、南下してきました。これに呼応する郡も少なくない様子。一方袁紹も、こちらに向かってくるとか?閣下にとって容易ならぬ事態かと憂慮いたしております」
 韓馥がどうすべきか?と問えば、こう答えた。
「公孫サンの軍勢は当たるべかざる勢いです。また袁紹も一世の英雄。いつまでも郡太守として、閣下の下位に甘んじている器ではありません。このキ州は天下の宝庫というべき土地。彼らが目をつけるのは当然の成り行きです。もし彼らが力を合わせてきたなら、一戦にして奪い取られる事でしょう。ここが考えどころ、公孫サンと袁紹を比べてみれば、袁紹は閣下とは旧知の間柄であり、連合軍の同盟を結んだ仲でもあります。ここはキ州を袁紹に譲ってしまうのが得策でしょう。キ州が袁紹のモノになってしまえば、公孫サンも手が出せません。また袁紹は大きな恩義を感じるに違いありません。閣下も有能者に譲ったという名声に加えて、絶対に揺るがぬ身の安全を得られるのです。もはや迷う事はありますまい」


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